旧日向家熱海別邸のご紹介

熱海にある「旧日向家熱海別邸」の見学に行ってきましたので、ご紹介します。〔24年6月訪問〕

概要

「旧日向家熱海別邸」。熱海駅からほど近い相模湾を望む丘(崖?)の上にあります。

2階建ての建物、その前の斜面に鉄筋コンクリート造りの地下室と屋上庭園からなります。

そのうち、ドイツの建築家ブルーノ・タウトが設計した地下室が、国の重要文化財になっています。

もともと「日向」さんの別邸として建築された建物が、民間企業の保養施設として使われたのち、熱海市が取得し、2005年から公開しているものです。

2018年から大規模修繕工事が行われ、2022年から公開が再開されました。

実業家 日向利兵衛の別邸として1936年竣工。

熱海市春日町の相模灘が一望できる急斜面上に位置する。日向氏の死後人手に渡り、戦後は民間企業の保養所として大切に利用された後、2004年に東京在住の篤志家の寄付により熱海市が取得し、翌年秋から一般公開を開始。 2006年7月 地下室が国の重要文化財の指定を受ける。

木造2階建母屋の前に、土留めを兼ねた鉄筋コンクリート造りの地下室が造られ、屋上が庭園となっている。その地下室部分の内装設計を担当したのが、ドイツを代表する世界的建築家 ブルーノ・タウトであり、日本に現存する唯一のタウト設計の建築作品である。

(熱海市ウェブページより)

申込み

見学は、事前申込み制です。
ウェブのみで、1人ずつ連絡先情報などを入力して申し込みます。

自由に見学できるのではなく、担当の方に連れられて、説明を聞きながら見て回ります。

1回あたりの定員は、10名です。
水曜日と土日祝日に開催されていて、夏の期間は1日4回、冬の期間は1日3回。

駅からの道のり

サイトでは、駅から徒歩8分。「ホテル東横インを過ぎたら、交差点手前右横の細い坂道を登ってください。」と案内されています。

案内に従って、ホテル東横インの先の交差点に向かいます。

ちゃんと案内の標識がでています。ただ、結構急な坂道です。

ほぼ一本道で、道なりに進んでいきます。

3~4分で、また標識が出てきます。

「ATAMI海峯楼」。隈研吾の設計した有名なホテルです。

その左手の急な階段を下ります。

その右手が入口です。

見学

入口から入ったところで靴を脱ぎ、荷物をロッカーに入れて、スリッパで中に入ります。参加料1,000円です。

写真撮影はOKですが、「個人でお楽しみいただくことだけに限定し、SNSなどのネット上に拡散しないことを条件に、撮影可としております。」とのことです。

そのため、写真なしで、さわりだけになりますが、概要をご紹介します。

入ったところが居間で、庭に向けて窓が開いていて、天気が良かったので、この段階で眺望を楽しめました。そこで、開始時間まで待ちます。

見学は、約90分。

最初にビデオで概要の説明を聞きます。
そして、まず2階建ての母屋の1階、2階を見て回ります。
その後、ブルーノ・タウト設計の地下室の見学です。
最後の入口から外に出て、屋上庭園に出ることができます。

以前は地下室しか見学できなかったようですが、
保存工事の際に耐震補強などもしっかりしたため、
現在は上屋も見学ができるようになったとのことです。

ガイドツアーでは、1つ1つのお部屋について、その当時の利用方法や工夫されている意匠などを説明してもらえます。

特に母屋については、昭和初期の建設当時から民間企業の保養所で利用された時期を経て、現在の姿になっているため、建築当初から残っているものなのか、その後の改修時のものなのか、分かってみるものもあれば、どちらか分からないものもあるようです。

説明では、そのあたりについても、丁寧に説明してもらえて、参考になります。

まず、母屋は、居間の奥に和の寝室、洋の寝室があります。どちらのお部屋からも初島が良く見えます。和室・洋室の目線の違いを考えて、窓の高さなどが工夫されているそうです。

寝室の奥には、浴室がありました。伊豆石敷き。
もちろん、伊豆山の温泉が引かれていたとのことです。

ちなみに、当時は、床下に温泉を巡らせて暖房していたとのことで、
各部屋にそのための温風の吹き出し口がありました。

見学のメインの地下室には、母屋の居間の脇にある階段から降りていきます。

社交室、洋室、和室と3部屋並んでおり、地下室といっても、斜面にある地下室なので、それぞれの部屋に大きな窓があり、そこから相模湾が良く見えます。

階段の手すりや壁、さらに照明を提げるための軸などに竹が用いられています。漆喰の壁や欄間、床材や天井の張り方など、様々な工夫がされています。

それぞれのお部屋に簡単な説明用の資料(パネル)が置かれていて、それを用いた説明をしてもらえるので、非常にわかりやすかったです。

また、小人数であるため、分からないところなどは気軽に質問もできます。

自由見学だったり大人数での説明ツアーだったりするとなかなか細かなところまで理解できないので、この形でのツアー、しかも90分みっちりというのも、なかなか良いなと感じました。

帰り道

見学した後は、来た道ではなく、反対の方に歩いてみました。

少し進んだ先にある階段を下りていくと、打ち捨てられたような家屋が建っています。その脇を下っていくと、反対側の道路に出ることができます。

ホテルKKR熱海の上、リゾーピア熱海の第一駐車場です。

リゾーピア熱海が良く見えます。

坂道を道なり降りていくと、トンネルのところに出ます。

そのまま、本日宿泊するリゾーピア熱海に向かいました。

総評

天気が良かったので、初島の眺望も素晴らしく、設計の意図もすごくよくわかりました。

ガイドツアーでは、本当に細部まで説明していただけるので、一度参加する価値はあるかな、と思います。

参考

こちらの地下室は、NHK「ブラタモリ」の熱海の回でも紹介されていました。

解散してしまったということですが、「ブルーノ・タウト連盟」という組織のウェブページに、この建物の構造が解説されていて、こちらもすごくわかりやすかったです。